** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第47回講座    2014.07.24  町田市民フォーラム

      暮らしの中に図書館を!
ー 賢い市民の図書館活用術 ー    守谷 信二 氏


 図書館職員として、サービスカウンターに立っていたころの忘れ難い思い出。
友達に薦められたと「イバキ・ノリコという人の、自分のことくらい自分でやれ
という詩」を探しに来た女子高生に、茨木のり子の詩集『自分の感受性くらい』
(花神社・1988年)を、すぐに手渡して喜ばれたエピソードが紹介され、その
詩を朗読するところから話が始まった。

 「ぱさぱさに乾いてゆく心を  ひとのせいにはするな   みずから水やりを怠っておいて気難し
くなってきたのを   友人のせいにはするな   しなやかさを失ったのはどちらなのか苛立つのを
近親のせいにはするな  なにもかも下手だったのはわたくし初心消えかかるのを  暮らしのせい
にはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった  駄目なことの一切を  時代のせいにはす
るな  わずかに光る尊厳の放棄・・・・」

 図書館員(司書)の仕事は、本とそれを必要とする人を結ぶこと。そうした遣り甲斐のある仕事に
魅せられて、図書館業務を29年間一途に行ってきた。また、その間に、現在の町田市立中央図書館
や市民文学館、金森図書館、鶴川駅前図書館を建設する仕事にも携わった。図書館は利用すると本当
に便利だし、支払った税金分くらいすぐに取り戻せる。是非、図書館を自分に役立てるように使って
欲しい。それにはどうすれば良いか、という話をしていただいた。

 図書館法第17条に「公立図書館は、入館料その他図書
館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならな
い」とされており、市民は誰でもが無料で図書館を利用で
きる。利用の仕方は大きく分けて3つ。
 ① 施設や設備の利用
 ② 特定の本や情報の利用
 ③ 知的好奇心を満たすための習慣的利用
である。②と③を中心に、次のような内容の話をされた。

1.「この本が読みたい!orこのことを知りたい!」など明確な目的を持って図書館を訪れる利用法
   「課題解決型図書館」などと言われ、こうした利用が図書館本来の利用であるかのようなPR
  がされる場合がある。目指す本や情報をピンポイントで探し手に入れられるのは、確かに図書館
  の大切な機能である。
   インターネットは、図書館の蔵書に限らず、様々な情報を自宅のパソコンで簡単に検索できる。
  手軽で、思わぬ情報を手に入れることが出来る反面、検索の仕方次第では情報が多すぎたり、出
  典が怪しかったり、いつの間にか情報が消えていたりといったマイナス面も多い。図書館資料の
  検索も、検索の仕方次第で、所蔵されているのにヒットしないことも多い。そこで、資料や情報
  を検索するためのテクニックと、知っておくと便利な検索サイトを配布資料で説明いただいた。
   また、図書館を利用する時には
  ① 予約・リクエスト制度を活用して欲しい。予約状況を調べ所蔵していなければ多くの場合購入
    し提供してくれる。
  ② レファレンスサービス(調べものの手伝い)をどんどん活用してほしい。その際には、どんなこ
    とを、何のために、いつまでに調べたいと具体的に相談して欲しい。
  etc

2.好奇心を満たすため「何か面白そうな本はないかな!?」と定期的に図書館を訪れる利用法
 これこそが図書館利用の醍醐味であり、王道である。自
分の知らない世界(未知の著者や分野)に出会って、それ
までの自分が少しずつ変化し、成長できるきっかけが得ら
れる。
 古書店、BOOK OFF と違い図書館は新しい本も古い本も、
あらゆるジャンルの本、入門書から専門書までテーマごと
に整理してあり、専門の司書がおり、相談に乗って探して
くれます。


3.図書館を利用する際に知っておくと便利なこと
   ① 中央図書館の配置図でどこにどんな図書が配置させているかを説明いただき、特に新刊棚と
     返却棚に関心をもつ。
   ② 図書館の本は日本十進分類法(資料配布)で並べてあり、関連する図書が別の書架にもある。
   ③ 地域・行政資料は豊富にある。
   ④ 図書、雑誌以外のパンフレットやリーフレット/AV/地図/マイクロフィルム/デジタル
     情報、全国の電話帳etc.ある。
   ⑤ 図書館の資料収集:2012年書籍発行点数82,200点で中央購入冊数(2012年度)19,977冊
     (24.3%)、全館63,335冊。毎週木曜日に選定会議(中央週平均400冊~450冊位)⇒ 選
     定基準、地方・小出版社の本の収集

4.町田の図書館事情
  ・図書館数(文学館含む8館・蔵書110万冊・政令市特別区を除く同規模自治体26都市中13位)
  ・移動図書館(BM)3台64か所/予約資料受取場所(南町田・忠生・小山)
  ・利用実績(2012年度・個人4,125,248冊・9.68冊/人、町田市民のみ9.15冊/人・同規模自治
   体中で4位)
  ・資料費(図書費2012年度決算額82,609千円、2013年度予算72,354千円・175円/人、多摩26
   市中25位・多摩平均325円)
  ・ネットワーク(市内 → 他市の図書館 → 都立 → 国会)/他市との相互利用協定(相模原・
   八王子・稲城・調布・府中・日野・多摩・川崎)/大学連携(和光大学)/専門図書館(無窮
   会図書館 → 玉川学園8-6-13/神道・国学・国語国文・国史・漢籍)/町田市立図書館の職員
   体制(2012年度176人中常勤56人・司書率81.3%) ⇒ 非常勤職員の増大/図書館が直面す
   る課題
    
 5.図書館活用の7ケ条として次の事項を推奨されました。
   第1条 まず、図書館に行ってみよう。 
   第2条 目指す本や雑誌がなかったら、諦めずに職員に聞こう。
   第3条 レファレンスサービスを上手に使おう。 
   第4条 頼りになりそうな職員を見つけて、名前を覚えて顔見知りになろう。
   第5条 「図書館はみんなのもの」であることを忘れずに。
   第6条 図書館利用は目的達成のための手段。自分らしい目的を設定してみるのも面白い。
   第7条 「身近に図書館が欲しい!」という声を挙げよう。

 6.最後に1866年(慶応2年)福沢諭吉「西洋事情」より
   「西洋諸国の都府には文庫あり。ビブリオテーキと言う。日用の書籍、図画等より古書珍籍に至
  るまで万国の書みな備わり、衆人来たりて随意にこれを読むべし」。
   日本に公立図書館の存在が紹介されて、たかだか150年。今でも、いわゆる先進主要国の中では、
  わが国の図書館事情は最低ランク。

   人間らしい生活を営むために不可欠な図書館を発展させるのは、市民自身が日常的に図書館を利
  用し、利用して良かったことも悪かったことも声に出して行政に伝えること

   図書館を知り尽くしての説明で、非常に判り易く、図書館をもっともっと利用し、自分を高めて
  欲しいと願ってのお話として参加者は大変参考になったのではないでしょうか。そして、これから
  は今まで以上に上手に図書館を利用することが出来るでしょう。

    

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