** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第54回講座    2015.01.29  町田市民フォーラム

            南方みなかた 熊楠くまぐす と “世界遺産” 熊野古道
     ー 熊楠エコロジーの成果 ー   井川 憲明 氏


 世界遺産、紀伊山地の霊場と参詣道は、2004年に登録された。霊場は三つあり、
空海による真言密教・高野山、山岳崇拝からくる山岳信仰の拠点・吉野大峰、そし
て、自然崇拝を因にした信仰・熊野三山、これら霊場への参詣道を熊野古道と称し
ている。
 熊野古道に南方熊楠は深く関わり、功績を残した。そして、そこには、南方熊楠
の自然に対する発想と視点があった。

 熊野の自然の中で南方熊楠についての話を聞いて育った井川氏は、「熊野古道は、まさに熊楠エコロジー
の遺産なのです」と語る。氏は、南方熊楠の思想について、次のように話された。

 南方熊楠は、近代日本における民俗学の先駆者であり、博物学・宗教学・植物学の研究者であり、特に、
粘菌研究で知られている。熊楠の粘菌研究から展開された自然
信仰(アニミズム)は、コスモロジーの曼荼羅化にあらわされ
ている。熊楠の粘菌研究は、神社合祀反対運動、神島天然記念
物指定運動といった自然保護運動から、“エコロギー”を唱え
るに至り、熊楠のエコロジー思想、即ち、反人間的「生命圏平
等主義のエコロジー」へと進化していく。熊楠のエコロジー思
想は、生態系中心主義(非人間主義)・環境倫理の発現として、
アルネ・ネスの「ディープエコロジー(反人間主義的立場のエ
コロジー思想)」、A.S.ミラーの「環境問題解決への提案」
へ繋がっていく。

 さらに、井川氏は、「熊楠を『超感性人』として捉えたい」とし、「熊楠が生命愛・アガペーに根付
く“超”感性(第七感)をもちあわせ、世界を直接的に把握する “能動的・探索的”プロセスを実践した
人であり、そうした熊楠の思想の本質は、生命に対するアガペーと生命愛の喚起にあった」と語られた。


    

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