** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第70回講座    2016.5.15  町田市民フォーラム

             「私たちに身近な財産権!!」
  松村 博之 氏


論題: 私達の身近にある「知的財産権」について
序論:  「知的財産権」とは、一口に言えば、人の知的活動によって 生まれた価値あるもの--財産--のことです。例えば営業活動によって 獲得した信用(いわゆる暖簾)、創作した詩歌、小説、物品のデザイ ン、計算機のプログラム、発明等がその代表です。 これらの財産に共通する特徴は、「無体物」--物質的な「形」がない 創造物--であることです。したがって金庫や倉庫にしまっておくよ うな事はできませんので、創作の存在に気づいた悪意の第三者によって 容易に模倣や盗用され得るものです。 そこで国は積極的に---つまり特別の法律特別の法律を立てて---これらの無体財産を保護する わけです。 その法的保護がどのように行われるか、を市民の目で見ることがこの講話の眼目です。 無体財産=無体物であるが価値を有するもの。 有体財産と同様に所有者が自由に使用/収益/処分できる。 例
*暖簾(=業務上の信用) (シャネル / シャンパン / サントリー/ニッカ)/td>
*サービス・マーク (やまねこ /白洋舎)
*デザイン(意匠) (東京ドーム)
ノウハウ(秘伝/ 奥義) (銘刀正宗の製法)
肖像・彫刻・絵画等の一品工芸品/td> (→著作権法で保護)
小説、脚本、音楽 (→著作権法で保護)
*考案< (洗濯ネット、万能ねじ回し)/td>
*発明< ( ICチップ、iPad、真珠の製法)
・黒い薔薇、ササニシキ (→種苗法で保護)
下線を付けたものを「知的財産」といいます。 * 付き知的財産は、下記の特別法で保護. 産業上利用できる無体財産(「工業所有権」とも云う)
・発明 → 特許法
・考案 → 実用新案法
・意匠 → 意匠法
・商標 → 商標法
Q:なぜ、知的財産を特別法によって保護するか? A:知的財産は法律によらなければ模倣盗用を防止できないから。 註:不正行為を規制する一般法として「不正競争防止法」があるが、この法律は損害が発生してから でなければ適用されず、その証明が困難であるため、無体財産の保護に馴染まない。(→ 保護の手 遅れ.例えば「蟹道楽」事件) →特許法、実用新案法、意匠法、商標法では保護対象を"審査・ 登録"を通して迅速に保護を図る。 <発明の保護> *発明とは、「技術思想創作(特許法3条1項)」 * 技術とは…特定の目的/構成/効果をもつ客観的手順→* 反復・伝達可能(御木本パール事件) * 累積的に進歩する *保護の手段(方法)一定期間、発明者に独占権を賦与し、その後は開放し、社会的利用に供する(特許法68条)。 ---発明者・国民双方の利益保護 →当該期間、"特許を征する者は世界を征する"から。 (USB、PDFはそれぞれ、Apple社、Adobe社が特許を自ら開放した. *保護(特許)の条件 1. 産業上利用できる 発明のみ---実用不可のものは保護しない 2. 当業者(=当該技術分野の平均的知識を有する者)に理解できるように公開すること (36条.) ---累積的技術進歩促進のため 特許発明の好適例 ドットプリンタ インクジェットプリンター ページプリンタ *特許制度の眼目 1. 発明に新規性と進歩性が必要 (公知技術を累積的進歩させる) 2. 先願主義vs先発明主義 (先に公開した者を優先的に保護する) 3. 審査主義 所定の基準を満たすものを保護。ただし考案は無審査) 4. 職務発明の対価 (発明に対する企業の寄与を考慮する)(→間歇ワイパー特許--先発明主義の欠点を象徴する例) 5. 優先権制度 (パリ条約) ・ PCT (複数同盟国に一括出願を可能にする) ・ 欧州特許条約 (→欧州共同体で共通の特許出願・審査) ・ アフリカ特許強力条約(アフリカ・マダガスカルで共通の特許権を付与する) ・ 日米統一特許条約(模索中) <商標の保護> 商標とは… 商品・役務に付けて、その商品・役務の出所を認識させる標識 →"一定の出所から出た商品として一定の品質があることを保証して(品質保証機能) 消費者に憶えて貰らえる ↓ 品質保証機能により、顧客吸引力が増大する。" ・キリンのマーク vs Asahiのマーク ・CocaCola の瓶 ・MetroGolwinMayerの吠えるライオン ・Frank Muhler vs フランク三浦のデザイン 保護の態様… 登録主義(登録した商標のみ保護--日本)vs使用主義(使用により周知されれば保護--米国) …それぞれに長所と短所 保護の条件… 1. 先行商標との間に出所混同を生じないもの 「出所混同」とは -- 異なる企業から出た異なる商品を、商標が類似するため、需用者が同一物と誤認すること。 * 「商標の類似」 -- 次のいずれかの点て類似する 称呼(「NHK」vs「MHK」、「クリスティーヌ」vs「クリスチーヌ」) 外観(「ライオン」vs「テイオン」) 観念(「キング」vs「王」) 2. 継続して使用すること → 3年以上不使用のとき、登録取消の対象登録取消可能 cf. 商標ブローカー → 使用する限り、何回でも登録更新可能 cf. 商標の転売(iPad) ただし、商標名が一般の物品名称と化すると、他人の使用を排除できない。 例: エレベータ、エスカレータ <我が国の伝統的知的財産> 「江戸時代に開花・発展した文芸、農業、鉱業、工業、水産、物流、教育・教養がある。これは日本人の 知性+江戸270年の平和の賜である」 (小島慶三:江戸の産業ルネッサンス(中公新書)) → ・ 現代日本の繁栄はこの伝統なくしてあり得ない。現在の知的財産もその延長線上にあります。 ・ 欧州・米国以外で、医学、生理学、科学技術の分野で10名を超えるノーベル賞受賞者 (平和賞、文学賞を除く)を輩出したのは日本だけです。 ・ ノーベル賞が無い数学や建築の分野でも日本は世界一流です。その世界の最高の受賞者を輩出しています。 ・ これは上記の我が国の伝統あっての話です。この事実にもっと注意したいものです。
    
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