** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第73回講座    2016.08.25  町田市民文学館ことばらんど2F大会議室

             「今、日本の森林は…」
 島田 泰助 氏


1 森林の現状
世界の森林面積は約40億haだが、1万年前には60億haだ
ったと言われている。文明の発展とともに森林は減少
し続けてきたが、現在でも毎年500万ha(日本の森林の
20%)以上の森林が失われている。
 
一方、日本は国土の約7割(2500万ha)を森林が占め、
森林率は世界で3番目となっている。日本のように人口
密度が高い先進工業国が、このように豊かな森林を維持
していることは、奇跡ともいわれている。
 
2 日本の森林の成り立ち
日本の森林は、戦国時代には当時の技術
で伐採利用できる範囲は、ほとんどはげ
山状態だったと言われている。地形の急
峻な日本では、森林が荒廃すれば洪水・
山崩れ等の自然災害につながり、その結
果、森林の大切さが認識され、森林の保
全が図られるという歴史が繰り返されて
きた。

戦乱が治まった江戸時代には、災害防止
のため荒廃した山地での植林が各地で行われた。また、水源林の造成や荒廃した山林から
海岸へ流れ出た土砂による飛砂被害に対処するための海岸林造成も各地で行われた。日本
3大美林や白砂青松の風景も先人の当時の努力によって出来上がってきた。

3 森林の復活と木の文化の喪失
日本の森林が最も荒れていたのは、第二次大戦後と言われている。
戦後、政府の最大の課題は災害に強い国土の創造であり、その柱は国土緑化と都市の不燃
化であった。昭和25年以来、国土緑化推進運動が国を挙げて行われ、全国で急速に植林
が行われ今日の豊かな森林が築き上げられてきた。

一方、都市づくりにおいては、不燃化と木材消費抑制のため建物の非木質化が進められた。
それと同時に不足する木材を供給するため、奥地天然林の伐採・木材輸入の加速化が行わ
れた。

奥地天然林開発は自然保護運動を惹起、外材輸入の増加は、国内林業を疲弊させるととも
に、途上国の森林に大きなダメージを与えた。
また、都市の非木質化は、「木は燃える、腐る、弱い」とのイメージを定着させ、木の文
化の国と言われた日本において、「環境のため木材はなるべく使わない。」「木材を使う
のは森林破壊」だと言われていた。

4 もう一度木材を使う時代へ
戦後70年が過ぎ時代は変わっている。天然林伐採の減少とともに自然保護運動は影を潜
め、戦後造成された人工林は大きく育ち「森林を健全に保っていくためには、木を切って
使ってやらなければならない」との考え方や「木材を利用することは地球温暖化防止や地
方創生に大きく貢献する」ことから積極的に活用していくべきとの考えが広く受け入れら
れてきている。

2010年の公共建築物等木材利用促進法やオリンピック施設での木材利用の動きもあり、
多くの建築家が最新の流行として木造建築に注目、新しい耐火等の技術も生まれてきてい
る。その結果、今まで使われてこなかったところにも木材が使われるようになりつつある。
… 学校、保育園、老人ホーム、音楽ホール、ショッピングセンターなど。

木造施設は居心地の良さなどから利用者に好評。公共施設の木造化は多くの人たちに支援
されてきた。法律に基づき全国の自治体1741中1516が木材利用方針を策定。(残念ながら
町田市はまだ。)木材を使うことは地球温暖化防止・地方創生への貢献等から大変重要な
課題。まだまだ身近に木材を使っていけるところはたくさんある。皆でできるところから
木材の利用を進めていくことをお願いしたい。



    
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