** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第74回講座    2016.09.28  町田市民フォーラム4F第2学習室

             「食中毒からあなたを守る」
 鈴木 潤 氏


食は元来、人に良いもの、不可欠の栄養素と考えられて
おります。しかし、 食に混入した細菌やウイルス、お
よび毒素等が、食べた人の主に消化器系に「中 (あ)
たる」のです。これが食中毒です。 

 夏の食中毒の原因物質の 9 割以上を占めるのが、微生
物(細菌・ウイルス等) によるものです。食中毒の原
因物質が「細菌」そのものであるか、または食品 中で
細菌が増殖する際に産生する「毒素」である場合を細菌
 
性食中毒と呼んで います。細菌性食中
毒の原因菌に指定されているのは、サル
モネラ属菌、腸炎 ビブリオ、黄色ブド
ウ球菌、ボツリヌス菌、大腸菌群、
O157およびカンピロバ クター等を代表
とする菌種です。
 食中毒原因菌の多くは生育に伴って
菌体外に毒素を産生します。これら
の毒 素は作用により溶血毒、細胞毒、
神経毒、腸管毒、および心臓毒等に分
類でき ます。致死毒性はボツリヌス
毒素、破傷風毒素が最強で青酸カリの
1000 万倍に もなります。細菌は、約 30 分に 1 回のペースで分裂します。この前提
で分裂、 増殖を繰り返していくと、1 個の菌が 15 時間後には 10 億個に達します。
増殖に 伴い、細菌から産生される毒素量も増えます。これらの毒素がそれぞれの標的
臓器を障害、すなわち食中毒を起こすのです。食中毒事例では、雪印集団食中 毒事件
および O157 事件について述べます。 


次に、予防に関する研究です。毒素は少
量で細胞に障害を起こしますが、こ の
働きを抑えることを毒素中和と表現しま
す。筆者は食材(お茶に含まれるカ テ
キン等)を使用して、毒消し、すなわち、
毒素中和効果を実験したことがあ りま
す。毒素の種類は溶血毒素です。この毒
素は赤血球の膜に穴をあけて、細 胞の
中にある血色素を漏出させる、赤血球破
壊毒素ですが、中和させるために、 お
茶に含まれるカテキンを阻害物質として
用いました。中和効果はレンサ球菌、
ビブリオ、リステリア菌、セレウス菌、エロモナスおよびブドウ球菌等が産生する溶血
毒素で見られました。カテキンによる毒素中和効果は病原因子除去および食中毒の予防
にも応用が可能であり、その実用が期待されます。 

食中毒の予防3原則は原因菌を「付けない」「殺す」「増やさない」であります。食中毒
の被害からあなたを守るためには、予防3原則を踏まえた上で、病原 細菌を体内に侵入
させないこと、もし入ったとしても、拡大させないこと、このためには早急で適切な治
療を受けることが大切です。また、免疫能を高める ことが重要であります。 

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は孫子の言葉ですが、細菌の特徴を 知ってこそ
食中毒の対策が始まるのです。食中毒にかからずに健康的な日々を 過ごすために、正確
な知識の上に、大いなる知恵を働かせて参りましょう。 


    
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