** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第77回講座    2016.12.16  町田市文学館ことばらんど2F大会議室

             人間とは何か —脳から探る—
 松田哲也 氏


 現実と脳内に表現された感覚のずれというのが生じ
ているのです。我々が今見ている、聞いていることは、
自然界に今起きていることを、そのまま正確に取り込
んでいるっていうふうに誰もが信じていますけれど、
実はそうでなくて、あくまでも我々の頭の中で出来上
がった像を見ているだけに過ぎないのです。現実にな
いものが存在するように、また、現実とは違ったもの
として感じてしまうということが、脳内で起こります。
これは、「錯覚」といわれる現象です。感覚器におい
て、情報を電気信号に変換する際に、エラーが起きているということがあるのです。
実際、一般の社会にないことが頭の中に取り入れた瞬間に、違って見えてしまうとか、
違って感じられてしまうということがあるわけです。

 また、我々人間は、脳内で表示された感覚を認知する際に、知識や記憶を使って理解
しようとすることをします。自分と他人が同じものを見ていたとしても、全く同じよう
に見えているとは限らないということです。
 私達の行動は、モチベーションと関係しています。我々はモチベーションのないのに、 体を動かしたりはしないのです。合理的に考えているところがあって、無駄なことを我 々はしたがらないのです。つまり何か目的があるから体を動かしたりするわけです。例 えば喉が渇いたから水を飲む。お金を稼ぐために仕事に行く。要するにそういう感じで 「何か目的があるから行動するんだ」というふうに考えられています。例えば「やるぞ」 というモチベーション。これは何でもいいと思います。知的興味心を持って、何でもや ってみるというような強い気持ちを持っていると非常に強い。「病は気から」といわれ ることも科学的に検証されていて、「風邪をひきそうだ。」と思っていると本当に風邪 をひいてしまいます。「大丈夫だ。絶対風邪をひかない」と思っていると風邪はひきに くいといったデータがあります。モチベーションは免疫力を活性化させるという意味で、 非常に重要だと言われています。こういう生きがいのある生活を持つというのは非常に 重要です。ではその「生きがい」とは何かという話ですが、専門的にいうと「動機付け は行動を開始させる、目標に向かって維持・調整する過程・機能である」と言われてい ます。モチベーションを高くもつというのはこういう意味でも非常に重要だということ です。 「潜在・顕在」という話をしてきまし た。我々の中では、知識というものが このように氷山のようになっているの です。その氷山の中に「顕在」「潜在」 分かれていて、ここで認識されるもの というのは、あくまでも水位変動みた いなものが起こって、この顕在化され ているものがある程度、上下するとい うことはあるけれども、我々の多くは このように潜在化、見えなくなってい る場所が多いのです。  脳は、人それぞれ個々に働き、それぞれの個人が知を持っています。個別の知が集 まることで、集団知というものが生まれます。個別知だけでは我々は生きていけませ んし、集団知だけでも実は生きていけません。人間は一人一人の向上と、そのつながり から生まれる社会で繁栄するものです。
 また、私達は意識的に物事を考えること以外に、無意識的にいろんなものの処理をし ています。私達の意思決定というのは、選択決定される前にすでに潜在的(無意識的) に決まっていて、その後顕在的(意識的)にその理由を考えていると考えています。 一般的に私達は、自分が気づいていることのみ脳で処理されていて、それで私達は行動 を決定していると思われますが、実はそうではなくて我々の日常の多くが、脳で潜在的 に処理された結果として、行動しているということです。
    
© 2011-2015 Machida Zatsugaku. All Rights reserved.
 
inserted by FC2 system