** * まちだ雑学大学 * ****

  講座概要


    
  第78回講座    2017.1.27  町田市文学館ことばらんど

             「まちだ - まちづくりの百年」
 高見澤 邦郎 氏


 町田が市になったとき、1958年の人口は6.3万人。
その後の60年間に7倍近く人口が増え、今や43万人の
大都市になっています。今日のお話は、この成長の
60年間を主題とするつもりでした。しかしお引き受
けしたとき、タイトルに「百年」と筆が滑って書い
てしまったので、改めて百年前、1917年(大正6年)
ころの町田を振り返ることから始めます。
 ひとことで言えば百年前は「絹の道から鉄の路」
への転換がなされた時期でした。八王子・横浜間の、御一新前後から栄えた絹の道
にあって人が集散した町田も、1917年の前後10年間に横浜鉄道開通(1908年)と小
田急線開通(1927年)で新しい時代を迎えたのです。人馬から鉄道の時代へと。
 新時代を迎えたとは言え町田の<農村地域の中心地>との性格はあまり変わりま
せんが、戦争直前に相模原方面に士官学校や病院といった陸軍施設が来たこと、
相模原が「軍都」として開発され始めたことは町田市にも影響を与えました。相模
原と町田が県境をはさんで双子のような案配となっていくわけです。

 戦争が終わると政府は、焼け野原で住む人も少なくなった東京区部の最大人口は350万人
を超えさせないとし、近郊は田園地帯とするという開発抑制的な「首都圏基本計画」を定
めます。そして区部と近郊を抑制する代わりに、その外には「開発区域」と名付けた産業
都市を置くこととします。ロンドンの都市計画に倣ったのですね。その第1号として「相模
原(主に工業)・町田(主に住宅)区域」を指定しました。
 しかし開発抑制は強制力もなく現実の前に破綻し、都心からその周辺へは人口がどんどん
と流入。さらに人口圧力は外へ向かい、町田も人が増えだします。当初、市の姿勢(換言
すれば元からの住民の姿勢)は開発歓迎で、鶴川・木曽山崎・藤の台などの大団地がつく
られていきました。しかし新住民の急増は学校・病院・上下水道等の財政支出の急増でも
あり、昭和40年代なかばからの大下勝正市長は市財政の破綻を防ぐには開発を一時抑える
べきとして、<団地お断り政策>を掲げます。この姿勢は当初批判されましたがやがて国も
理解するところとなっていきます。

 
 それでも人口が増える中で、市
街地の整備のために周辺地での
区画整理事業と中心市街地での
再開発事業が進められます。田
園都市線沿線などでは良好な住
宅地づくりが、中心市街地では
横浜線原町田駅を小田急線新原
町田駅寄りに移動して両駅をデ
ッキで結ぶなどの、全国でも当
時名を馳せた大再開発が時間を
かけて実施されました。東急ツ
インズ・市立図書館なども再開
発事業の一環としてつくられ、
駅名もJR・小田急ともに「町田
駅」と改称されたのです。
 団地お断り政策もあって極端な人口増はなくなりますがその後も流入人口は増え続け、
21世紀に入ると40万人を超える大都市となったわけです(金沢・長崎・高松などの県庁
都市と並びます)。しかしさすがにその後は人口増も頭打ちとなる一方、ご多分にもれず
少子化・高齢化の時代に。

 そんな町田が今後のまちづくりについて考えるべきは何でしょうか。三つあると思います。
一つは中心市街地の魅力をさらに高めることです。例えば、可能かどうか不確かなモノレー
ル誘致などでなく、大混雑している両駅のコンコースを再整備して快適な空間にするといっ
た現実的な取り組みです。また一つは、「良好な住宅地」という町田の評判を一層磨き上げ
ることです。乱開発を防止し気持ちのいい街並みを維持していく。そしてもう一つは他都市
にはない町田ならではの緑、これの中心は小山田・小野路の緑など多摩丘陵に残された貴重
な緑ですが -しかもそこには水が湧き、流れ、農業も維持されている- それを守り、整
備することです。
 さてこのように今後のまちづくりの課題を挙げると、時代はハードからソフトに比重が移
っていることが分かりますね。中心商業地を元気にする、街の風景を魅力的にする、緑を残
し農業を応援するといったまちづくりは、商業者や農業者も含む「市民」が自ら意識し、取
り組むべきことがら。土建的公共事業のまちづくりから「市民力」によるまちづくりへと、
時代は変わってきているのです。

*参考文献として市制50周年のときに刊行された『町田市まちづくり50年史』を挙げておき
ます。町田市都市づくり部に問い合わせれば、たしか500円で今でも入手できると思います。



    
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