1.たくましい子どもに育てたいが……
私自身が子どもだったころからの約半世紀の間を振り返って考
えてみますと、子どもたちに「たくましさ」が無くなってきた
と感じます。例えば、「友達に何か言われた」とか、「大人か
ら注意を受けた」というような場合、その内容がそれほどでも
ないのに、すぐ落ち込んでしまう子どもたちが目立ちます。
また、「叱らなければならない場面」や「強く励まさなければ
ならない場面」においても、そのときの言葉遣いや態度に気を
付けなければならなくなってきた気がいたします。
中学校の教員をしていたころに出会った生徒の中にも、何かに 挑戦しようとする場面で、失敗
をしたときのことを恐れ初めから尻ごみをしてしまうという子どもが増えてきました。 「傷つ
くことを心配する子どもたち」が増えてきた、と言ってもいいかもしれません。
2.子どもたちが育つ環境が気になる
そうした「たくましさ」が感じられない子どもは、育っていく環
境にも原因があるように思います。そう思えてならない場面を、
いくつか取り上げてみたいと思います。
○「子どもに判断させたり責任を負わせたりする。」という場面
が少なくなり、その結果、「自立心を育てることが難しくなって
いる」ように思われます。「『鍛える。』ということを意識して
子どもを育てる」ことが難しくなっている気がします。
○「やりたいことを、やりたいだけやる」というような過ごし方ができなくなっているように思
います。今の子どもたちは、「いつも時間のことを気にしながら活動している」ように感じます。
「時間を忘れるほど、夢中になって遊ぶような体験がしにくくなっている。」と思われます。
○情報化の進展は、便利なこと、良いことばかりでなく、例えば、文字を通してのコミュニケー
ションが増え、直接顔を合わせて気持ちを伝えるようなことが少なくなっているなど、子どもた
ちの成長に、今後どれほど大きな影響を及ぼしていくのか、とても心配です。
○子どもが生活している周りには、「交通事故」「不審者による被害」「大きな自然災害」など
子どもの安全・安心を脅かすような心配ごとが増えました。親をはじめとする大人は、まず、そ
うしたことから、「子どもを守ること」に徹しなければならなくなり、「たくましく育てる」と
か、「心身を鍛える」というようなことが、できにくくなってきてしまっているように思われま
す。
○「身体的にも弱くなってきている」のではないかと感じます。もともと病弱に生まれてし
まった一部の子どもを除けば、環境の変化や病気に負けない抵抗力がつくように、積極的に
鍛えることが必要だと思うのですが、最近は、それが難しくなってしまいました。
3.子どもたちが育つところ……「家庭」「学校」「地域」
「子育て」あるいは「子どもの教育」は、「家庭」「学校」
「地域」の三者が、まず、各々の責任と役割を自覚して、
「子育て」や「教育」に取り組み、そのうえで、もし、不十
分なところがあれば、お互いに協力し、補い合ったりして、
進めていくはずのものである、と考えています。しかし、現
実は、「家庭」「学校」「地域」の三者それぞれに、子育て
にかかわる課題が存在しているように思っています。「地域
の教育力」も、年々期待しにくくなってきているように感じます。また、 「家庭」あるいは
「親」の子育てに対する責任や役割が果たせていると思えない ような事例も増えてきています。
改めて、家庭(親)は子育てに対してどんな役割を果たさな ければならないかについて考え
てほしいと願うばかりです。
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